症状・苦痛・意識状態を把握するための評価尺度

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)や意思決定支援を進めていくうえでは、患者さんの「いまのつらさ」や「言葉にしにくい変化」に気づくこともとても大切です。

前回は状態・予後を把握するための指標をご紹介させていただきましたが、今回は痛み・苦痛・意識状態・せん妄など、状態に特化した代表的な評価尺度をご紹介します。

評価尺度は、患者さんを数字だけで判断するためのものではありません。日々の観察や対話と組み合わせながら、症状の変化に気づき、より適切なケアにつなげるために活用されます。

目次

痛み・つらさを把握する評価尺度

NRS(Numerical Rating Scale)

患者さん自身に、痛みの強さを0〜10の数字で表してもらう、とてもシンプルな評価方法です。

「0=痛みなし」「10=想像できる最も強い痛み」として、痛みの程度や治療前後の変化を確認します。病院・外来・訪問看護など幅広い現場で用いられています。厚生労働省の痛みの評価資料でもNRSが用いられています。

厚生労働省「痛みの評価シート」

ESAS-r-J(Edmonton Symptom Assessment System revised 日本語版)

進行がん患者さんのさまざまな症状をまとめて評価するための自己評価尺度です。

痛み、だるさ、眠気、吐き気、食欲、不安、気分の落ち込み、息苦しさなどを評価し、「どの症状が今一番つらいのか」を把握する際に役立ちます。国立がん研究センターから日本語版の評価票が公開されています。

国立がん研究センター「ESAS-r-J」

STAS-J(Support Team Assessment Schedule 日本語版)

患者さんの身体症状だけでなく、不安、病状の認識、家族の不安、コミュニケーションなども含めて評価する尺度です。

患者さん本人の訴えだけではなく、医療者の観察も含めて、緩和ケア全体を幅広く把握する際に活用されます。厚生労働省の緩和ケアスクリーニング資料にもSTAS-Jが掲載されています。

厚生労働省「STAS-J」掲載資料

PAINAD(Pain Assessment in Advanced Dementia)

認知症などにより、自分の痛みを言葉で十分に伝えることが難しい人の疼痛を観察から評価する尺度です。

呼吸、発声、表情、身体の動き、慰めやすさなどを観察し、痛みが隠れていないかを考える際の手がかりとして用いられます。

意識・せん妄を把握する評価尺度

RASS/緩和ケア用RASS(Richmond Agitation-Sedation Scale)

患者さんの興奮の程度から鎮静の深さまでを段階的に評価する尺度です。

緩和ケアでは、せん妄による興奮や、苦痛緩和のために鎮静を行う場合の意識状態を継続して確認する際などに用いられます。緩和ケア用RASS日本語版も作成されています。

J-STAGE「緩和ケア用RASS日本語版」

CAM(Confusion Assessment Method)

せん妄を早期に発見するための代表的なスクリーニングツールです。

急に起こった意識・注意力の変化や、思考のまとまりにくさなどを確認し、「いつもと様子が違う」という変化をせん妄として見逃さないために活用されます。CAM日本語版については妥当性も検証されています。

J-STAGE「CAM日本語版の妥当性」



評価尺度はあくまでも小さな変化に気づくための「手がかり」

患者さんのつらさは、必ずしも言葉で「痛い」「苦しい」と表現されるとは限りません。

特に認知症がある方や、病状が進み会話が難しくなっている方では、表情や呼吸、動き、意識状態などの小さな変化からつらさに気づくことが大切になります。

以上、緩和ケアや在宅医療の現場で活用されている、主な評価尺度をご紹介しました。
評価尺度は、その人の状態を数字だけで判断するためのものではありません。
「何かいつもと違う」「もしかしたら苦しいのかもしれない」と気づき、患者さんに必要なケアにつなげるためのひとつの手がかりとして、ぜひご活用ください!

ホスピスケアを広める会では、これからも人生の最終段階における意思決定支援やACP、緩和ケアに役立つ情報をお届けしていきます。

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